1月25日(金)
1993年11月というから、 約14年前のこと。 川崎市宮前区の宮崎小学校の120周年で、 約千人の児童が、 手紙をつけて風船を飛ばしたんだそうだ。 風船はどこをどう飛んだかは不明だが、 何と、犬吠埼の南東約60キロ、 約千メートルの海底で採れたサメガレイの表面に くっついた状態で水揚げ。 市場で仕分けをしていると、 「おや、変な紙がくっついているぞ。 邪魔だな、捨て・・・」 ようと思ったが、この紙を開いてみると、 川崎の小学一年生からの手紙。 おへんじをください と書いてあり、 名前がひらがなで書いてある。 銚子の漁業協同組合から、 宮前区の宮崎小学校へ電話。 「120周年は、1993年ですから、 もう14年も経っています。 そ〜ですか。よく見つかりました。 ちなみにどちらで見つかったんでしょうか。 千葉の、え、銚子?!」 「それが、海の中からなんです」 「海の中?」 「ええ、それも千メートルの海底で、 底引き網に引っかかったサメガレイの表面に くっ付いておりましてね、 仕分けの時に発見いたしました」 「サメガレイの表面ですか」 「表面がぬるぬるしてますから くっ付いたんだと思います。 おへんじをくださいって 手紙に書いてありましたんでね、 小学一年生の、この女の子の夢を 壊しちゃいけないんじゃないかって 仲間うちの意見がまとまりまして、 お電話をさせていただきました。 ひらがなで名前も書いてあります」 すぐに小学校で調べてみますと、 何と、現在W大学の2年生ということが判明。 本人もびっくり。 そういえば、120周年の行事だとかで、 全校生徒が一斉に手紙付きの風船を飛ばしたなぁ〜 よく見つかったな〜。 しかも、千メートルの海底から、 カレイが届けてくれるなんて。 「もう、カレイの煮付けは食べられない」 と言ったかどうかはわかりませんが。 翌日、銚子の漁港へ、この女性がやってくる。 手紙を受け取ると、 たどたどしい、しかし一生懸命書いた、 ほとんどひらがなの手紙。 確かに見覚えのある自分の筆跡。 耐水性の紙だったからでしょうか、 字も鮮明に読めます。 「これと同じ種類のカレイの、 ここんところに、こうやって くっ付いてましてね。 口が、まだパクパクしてましたから、 耳を近づけてみると よろしくって言ったように聞こえました。 当のカレイは、鮮魚店に売られて行ってしまったんですけどね」 海底千メートルから、 サメガレイが手紙を運んできてくれたことに あらためてびっくりするとともに、 忙しい仕事の合間に わざわざ連絡をしてくれた 漁協の方の優しさに触れることができ、 そして、在りし昔の、 小学生時代を思い出したひとときとなりました。 この女性、手紙を受け取ったのみならず、 何か大切な物を受け取ったような 気がしたに違いありません。 その晩、彼女は夢を見ました。 小学一年生の自分。 海の中を、亀に乗ってきてみると 竜宮城という看板。 多くの魚が出迎えてくれます。 テーブルの中央に座っているのが、 クラス担任のサメジマかれん先生。 そしてよく見ると、 小学時代の旧友たちも招かれている。 懐かしい顔ぶれ。 気づいてみれば、 宮崎小学校の懐かしい教室。 「大きくなったら何になりたいですか?」 「プロ野球選手になりたい」 「歌手になりたい」 クラスメートが口々に夢を語ります。 「そうか、小学校の時には、 ○○になりたかったんだ、あたし」 目が覚めて翌日、 新鮮な気持ちで、大学に通ったという、 これは「カレイが運んだ手紙」と題する新作講談。 講釈師見てきたような嘘をいい、 平成20年1月25日付の東京新聞夕刊をもとに、 一席の講談を作ってみました。
by ryoukakunokai
| 2008-01-25 23:11
| 凌鶴日記
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